孤高の人

「いいえ、私は、これはやらないでしょう。他人といっしょでないと登れないようなところなら私は登りません。」

(「孤高の人」上巻p125 5-6、新田次郎著)



加藤文太郎が言う。

「これ」とはロッククライミングのことだ。

つまり、ロッククライミングなんかやりたくないよということだ。

でも、自分はやりたい。激しく岩登りをしたい。

だけど、文太郎の気持ちも分かる。

岩登りはしたいけど、するにはザイルパートナーが必要になる。

もちろん岩登りをやる知り合いなんかいないから、山岳会に入るか登山講習に申し込むしかない。

だけど、そんな勇気は無い。というよりも面倒臭いのだ。

だからやりたいと思いつつもなかなか最初の一歩を踏み出せないでいる。

ボルダリングならパートナーなんか必要ないじゃないか」という人もいるだろう。

確かにその通りだ。体ひとつで登るボルダリングはロープを使わないから、一人でも登れる。

実際ボルダリングジムには何回か行ったことがあるし楽しいと思う。

ただ、自然の岩場には一度も行ったことが無い。

勝手なイメージかもしれないが、ボルダリングエリアになってる自然の岩場はワイワイ大勢の人で騒ぎながら登っていて、自分だけ一人で行っても居づらくて孤独感を感じるだけなんじゃないかと思う。

そんな中でやるのは苦痛を感じるだけで楽しむには程遠いのではないだろうか。

その点、沢登りは落ち着いた気分で歩くことが出来る。

なんと言っても人にほとんど会わないところがいい。

余計な気を使わなくてすむし、自分がしたいように出来る。

沢登りで滝を登るのはロッククライミングの領域に入る。

今のところロープを使って登ったことはない。全てフリーソロで登るか、高巻いている。

そのうち高巻き不可能でロープ必須の滝に出会うだろう。

その時はじめて、本気でロープの使い方を覚えようとするだろう。

ただ、自分はザイルパートナーを求めることはせずにソロクライミングを選ぶ。